5.灰色の太陽
これまで黒いと記憶していた太陽が、
この暗闇のなかだと、僅かばかり光を放っているのが分かる。
人の眼というのも案外当てにならぬものだ。
世界が変わると見るもの全てが別のもののように映る。
何にせよ、黒い太陽もとい僅かに光を放つ、
言ってみれば灰色の太陽だけが私の目に映る全てだった。
そしてその太陽こそが、今の私に残された最後の光だった。
意識を失ってから今までの記憶だけがスッポリと抜け落ち、
どこに居るのかも解らぬまま灰色の太陽を見上げている。
いや、見上げているのかさえ定かではない。
ただ脈打つ心臓の鼓動音だけが、
まだ生きているということを実感できる唯一の証だった。
これまで感じた事のない”孤独”という感覚。
この不確定な現実から逃れるためなら、
悪魔に魂を売る覚悟さえあった。
が、今の自分にはそれすら許されない。
ただ黙って灰色の太陽を見つめることしか。
唯一出来ること。
それは目を瞑ること。
しかしそれをしてしまえば、今度こそ何も無い。
その思いだけが私を岸壁の淵で留まらせていた。
灰色の太陽は、先より幾分暗さが増したように映る。
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