2.ゆらゆら
心臓の鼓動が早くなっていくのがわかる。
ただその動揺とは裏腹に小舟は穏やかに白海を漂う。
どうすることも出来ず、どうにもならず、
私はその場に蹲り、これは夢なのだと自分に言い聞かせた。
毛布などあれば頭からスッポリと被ってしまいたかったが、
生憎、不要な積荷は置かれていなかった。
信じるのは自分のみだと思った。
いつ消えるともわからないランプの明かりと、
霧の中へと消えていったもう一隻の小舟を頼りに、
私はこのたゆたう小舟に身を任せるしかなかった。
かつて神だの迷信だの信じたことなどなかった私が、
初めて何かに縋りたいと思った。
得体の知れぬ恐怖と不安に体は震え、
額と手の平からは絶え間なく汗が滲む。
更には極度の空腹と眠気で思考回路は途切れてゆく。
乾ききった口内はもはや唾さえも飲み込めず、
血液を口いっぱいに含んだような感覚が広がっていた。
これがいつまで続くのかと薄れ行く意識の中で、
考えに考えたが、当然答えなど出るはずもなく、
やがて私は意識を失った。
白い海を漂う一隻の小舟。
抜け殻となった私を乗せ、ゆらゆらと揺れている。
頼りなく舟を照らしていたランプは、
当にその役目を終えていた。
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